アメリカ人はXMで口座を開設できない
XMの評価の高さ
少額の資金から始めることのできる投資としては、「FX」(外国為替証拠金取引)が有名です。海外のFX業者を利用すると、国内をはるかにしのぐ超ハイレバレッジを効かせることができますので、国内FXから海外FXに切り替えるトレーダーも増えてきています。
海外のFX業者といっても千を超える数がありますので、サービスは千差万別ですが、その中でも日本人トレーダーから圧倒的な支持を受けているのが「Trading Point Group」が運営する「XM」です。888倍という超ハイレバレッジでの取り引きが可能であり、口座開設だけでなく入金額や取り引き量に比例してボーナスが付与されるシステムがトレーダーに好評です。
XMの評判の高さは日本人トレーダーに限った話ではありません。2019年3月、イギリスの経済紙であるWorld Financeは、ベストFXブローカー賞に、ヨーロッパ、オーストラリアの2地域でXMを選出しました。XMはこれで「ヨーロッパでは3年連続の受賞」、「オーストラリアでは初の受賞」ということになります。もはや世界で最高評価を受けるほどのFX業者までに成長しているのです。
XMは日本の金融庁のライセンスを所有していません。金融庁のライセンスを所有して運営していくことになれば、レバレッジの規制、ゼロカットシステムの凍結、ボーナスの廃止など多くのメリットを失うことになるからです。金融庁のライセンスを所有していないFX業者であっても、日本人がFX口座を開設し、取り引きすることは違法ではありません。納税義務さえ果たせばまったく問題ないのです。ただし金融庁サイドとしては、運営状況の見えないこうした海外のFX業者に対して、ホームページ上で警告を発しています。
しかし口座数や実績を比較しても、国内のFX業者よりも信頼できるのがXMであるのは確かです。MT4やMT5といったトレードプラットフォームは、国内のFX業者が提供するオリジナルトレードプラットフォームよりも透明性は高く、機能性に優れています。国内ではさらにレバレッジが規制される動きもありますから、国内FXに見切りをつけて、XMを利用するトレーダーは増えていく一方でしょう。
ドッド・フランク法による規制
そんな中で世界一の経済大国であるアメリカに目を向けてみると、XMを利用しているトレーダーの数は実質ゼロという状態になっています。これはとても意外ですが、なぜアメリカではこれだけの人気を誇るXMのサービスを活用しないのでしょうか?
これにはアメリカ金融規制改革法である通称「ドッド・フランク法」(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)が原因しています。アメリカ移住者がアメリカ国外のFX業者でFX口座を開設することを、商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission:CFTC)は許可していません。つまりアメリカではキプロスに本拠点を持つXM(Trading Point Group)でFX口座を開設することができないのです。
これはXMのホームページ上でも記載されていました。XMではアメリカ、カナダ、イスラエル、イラン居住者には口座開設ができないと告知しています。
また、外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act:FATCA)というアメリカ人の租税回避防止のための法律があり、アメリカ国外の金融機関で取り引きした場合、その金融機関がアメリカ内国歳入庁(Internal Revenue Service:IRS)に報告しなければならないという義務もあるのです。
様々な壁が立ち塞がっており、これまではアメリカでXMを利用することは不可能だったわけです。しかし、アメリカのマーケットは魅力的です。XMとしてもアメリカへの進出は悲願でもあったことでしょう。
XMがついにアメリカへ進出
新ブランド「Trading.com」立ち上げ
XMは2019年1月にアメリカの先物協会(National Futures Association:NFA)にライセンス申請を行いました。ついにXMは本格的にアメリカマーケットへ進出に動き出したのです。同年7月段階としては、まだ審査中となっています。
Trading Point Groupが立ち上げた新ブランドは「Trading.com」という名前のため、XMという名前は登場していませんがXMとは同じグループにはなります。XM UKはイギリスのトレーダーに対して、FX口座をTrading.comに移管するよう2019年6月末から促しています。そして同年7月下旬から始動しました。ライセンスはこれまで同様に、イギリス金融行動監視機構(Financial Conduct Authority:FCA)となり、FCAの統制下でサービスを提供していくことになります。
ですからアメリカでの申請許可が下りても、XMとして集客していくわけではないようです。アメリカでの展開に成功すれば、Trading.comは既存のXMに匹敵する巨大ブランドになるかもしれません。
サービス内容は一新される?
XMといえば「888倍の超ハイレバレッジ」、「開設ボーナスや入金ボーナスだけではなく、取り引き量に応じてXMポイントが付与される」、「MT4とMT5というトレードプラットフォームが利用でき、STP方式のスタンダード口座、アカウント口座の他、スプレッドの狭いZero口座の開設が可能」といった特徴を持っていましたが、Trading.comはサービス内容をモデルチェンジするようです。
ウェブサイトも大きくデザインを一新し、トレードプラットフォームや取り引き形態もこれまでよりもシンプルなものを推進していくと発表しています。教育コンテンツの提供に力を入れ、Investor Zoneという会員ページには、これまでにない機能を持たせて、それを利用可能にするとのことで、何がどこまで変わってくるのかに注目が集まっています。
また、XMにとっては集客の柱だったボーナスなどのインセンティブも見直したサービスを提供していくということなので、Trading.comはこれまでのXMとはまったく別のFX業者と考えていいのかもしれません。もちろんアメリカにも大手FX業者がひしめいているわけですから、そこに割って入るには、新しいニーズに応えるサービスを提供していく必要があります。Trading.comが提供していくことになる新サービスであれば、アメリカでもしっかりと差別化ができるということなのでしょう。
2009年に設立されたTrading Point Groupは、現在では196カ国もの国々に展開し、顧客数は250万人を突破しています。Trading.comはアメリカで成功し、どれだけの成果をあげることができるのでしょうか?
XMのチーフマーケティングオフィサーは、ターゲットは「アメリカのミレニアム世代」だとコメントしています。2000年代に成人したこの世代は、アメリカの人口の約2割、7,000万人以上です。リーマンショックなどの金融危機を若い頃に経験しており、親との同居率はアメリカの歴史上もっとも高いともいわれています。一方でデジタル機器の恩恵を受けて育った初めてのデジタルネイティブ世代でもあります。このミレニアム世代を獲得するため、はたしてTrading.comがどのような戦略を用いてくるのか、とても興味深いところです。
もしかするとTrading.comの誕生によって、アメリカのリテールFX市場は大きな変貌を遂げることになるかもしれません。様々な期待の中で、Trading.comは着々とその期待に応える準備を進めています。