資源国通貨の特徴
南アフリカは、金やダイヤモンド、プラチナやレアメタルなどの鉱物資源が国の経済を支えていますので、「資源国通貨」(コモディティ通貨)と呼ばれます。
南アフリカは、金の産出量が世界全体の半分を占めており、南アフリカの通貨である「南アフリカランド」(ZAR)は、金価格との連動が強いのが特徴です。金価格が上昇すれば南アフリカランドも上昇し、金価格が下落すれば南アフリカランドも下落するという傾向があります。
金価格は2011年~2012年をピークに大きく上昇したものの、それ以降は下落トレンドです。2018年に注目しても、1月をピークにして、8月まで下落を続け、後半になってやや立て直しているような状態です。
2018年、南アフリカランドがなかなか上昇しなかった理由として大きかったのは、金価格と共に、4月からプラチナが軟調だったからということが考えられます。
南アフリカの輸出国としては、第1位が中国、第2位がアメリカ、第3位が日本となっています。日本はさておき、貿易紛争を繰り広げている米中の行方は、南アフリカにとってとても重要です。中国、アメリカの景気が後退すると、南アフリカの経済にも大きな影響を与えるということは押さえておく必要があります。
南アフリカランドを扱う場合は、アメリカや中国の状況には注目しておきましょう。
ちなみに他の資源国通貨としては、南アフリカと同じく金を産出し、他にも天然ガスや石油、ウランなどの資源を持つカナダドル(CAD)、鉄鉱石や石炭、ウランの他に小麦などの農作物も資源にしているオーストラリアドル(AUD)、農作物や畜産物を資源にしているニュージーランドドル(NZD)などが有名です。
南アフリカの経済状況と為替レート
南アフリカランドは、高金利の新興国通貨としても注目を集めてきましたが、ボラティリティ(変動率)が高く、政情不安になることも多いため常に注意が必要でもありました。
南アフリカの政策金利や、南アフリカランド/日本円(ZAR/JPY)の為替レートを振り返ってみましょう。
2007年には1南アフリカランド17円台をつけていましたが、サブプライムローン問題、リーマンショックによる金融不安によって、円高が進み7円台まで急落しています。その後は回復の兆しもあり、2014年11月には11台に迫るところまで上昇しました。
しかし、2015年、経済成長や電力不足の問題から、格付け会社のフィッチ・レーティングスによって外貨建て長期信用格付けを一段階引き下げられることになり、ここから下落トレンドに入りました。2016年6月には6円台の最安値を付けています。
高値でロングポジションを保有していた場合、急落の幅が大きいので損切りや強制ロスカットになったトレーダーは多かったでしょう。
2017年に入り、アフリカ民族会議(ANC)議長選で、シリル・ラマポーザ氏が当選。2018年2月にはこれまで大統領を務めていたジェイコブ・ズマ氏が退陣し、増税といった本格的な財政改革が始まります。以前に財務省を更迭された経緯のあるネネ氏を再び財務相に抜擢するなどといった姿勢も認められ、1南アフリカランド9円台まで回復しました(ネネ氏は汚職疑惑のため2018年10月に辞任しています)。
この期間の政策金利は、2008年11月には12.00%だったのが、2010年11月までに5.50%まで引き下げられ、2012年7月には5.00%となりました。その後は利上げで2016年3月までに7.00%まで上昇しましたが、2017年7月に再び引き下げ、6.75%。2018年8月には6.50%となっています。
この影響もあって、2018年8月にはまたもや急落し、1南アフリカランド7円台を割り込むところまで下落しましたが、年末にはなんとか8円台を維持している状態です。政策金利は12月には6.75%と上がっています。
南アフリカランド/日本円(ZAR/JPY)のレンジとしては6円台が底になりますので、現状としてはロングポジションを保有したいところですが、新興国通貨はさらに底をつける危険性もあるので注意が必要になります。
スワップ金利を狙う際の注意点
南アフリカランドの魅力はやはり「スワップ金利」の高さになります。日本の主要なFX取引所のスワップ金利は、南アフリカランド/日本円(ZAR/JPY)の場合、低い取引業者でも100円、最も高い取引業者だと160円です。これだけ見るとトルコリラ/日本円(TRY/JPY)に匹敵しますが、南アフリカランドの場合は、10万通貨のスワップ金利の表示になっていますので気を付けてください。
つまり1万通貨で計算すると、10円から16円のスワップ金利ですから、決して高いとはいえません。米ドル/日本円(USD/JPY)のロングポジションの方がスワップ金利はお得です。
ただし、2018年12月13日の時点で、1南アフリカランド8.0350円ですから、1万通貨でも8万円。10万通貨でも80万円です。レバレッジ25倍を適用すれば、3,2000円で10万通貨を購入できます。少ない資金で多くのポジションを保有できるのは、南アフリランドのメリットになります。もちろん為替レートが下落した場合は、スワップ金利よりも為替損失の方が大きくなりますので、しっかりとしたリスクマネジメントをしていかなければなりません。
南アフリカランド/日本円(ZAR/JPY)は、「スプレッド」が最も狭い取引業者で、0.99pips、広い業者になると3.3pipsとなっています。目安は1.0pipsになるでしょう。やはりメジャー通貨ペアと比較するとスプレッドは広めです。スキャルピングなどの超短期売買には不向きな通貨になります。
南アフリカランドを扱う際は、スワップ金利を期待しながら長期でポジションを保有するのがいいでしょう。ただし、いつ急落するかわからないというリスクがありますので、損切り(ストップロス)設定は必ずしておく必要があります。スワップ金利狙いで50Lotなど膨大なポジションを保有している場合は、1円下落しただけで50万円の含み損になりますので、余剰金は潤沢な状態にしてから保有すべきです。少なくとも6円台まで下落しても含み損に耐えられるようにしておくのがいいでしょう。
トルコリラと同様、南アフリカランドは「今が買い時」、「必ず儲かる」といった宣伝広告が多いですから、その言葉だけを信じて安易にトレードしないように充分に気を付けてください。