移動平均線を活用したテクニカル分析

FX(外国為替証拠金取引)では、為替相場の動向を予測する方法として、「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」があります。

どちらか一方を重視するトレーダーもいますし、実際にそれで成果を出しているケースもありますが、やはりバランス良く、どちらの分析方法にも精通できるようになるのがベストでしょう。

ファンダメンタルズ分析は、通貨を扱う国の景気や金利、政治情勢などから、今後通貨高に傾くのか、通貨安に傾くのかを予測していくもので、長期的な資産運用を行っていく際には重要な材料になっていきます。

テクニカル分析は、「チャート」によって過去の為替変動のデータを活かしていくもので、短期売買や超短期売買の際に重視される傾向があります。その際に多くのトレーダーが活用しているのが「ローソク足チャート」です。ローソク足の期間設定によっては、長期のトレンドも確認することが可能です。

始値よりも終値が上昇しているローソク足を「陽線」と呼び、始値よりも終値が下降しているローソク足を「陰線」と呼びます。短期変動にスポットを当てた5分足チャートと、長期の変動にスポットを当てた日足チャートでは、陽線や陰線の動きがまったく異なります。

全体的に上昇トレンドであっても、陽線ばかりが続くわけではなく、陽線と陰線が繰り返されながら上昇していくことになるのです。1本1本のローソク足を追っていたのでは、「もう上がらないと思ったから売ったら上がった」、「もう下がらないと思って買ったら下がった」という真逆の売買が続き、損失が膨らむことになります。

このような極端な為替変動を平均化して、為替相場の動向を分かりやすく表示したものが「移動平均線」(Moving Average)(MA)になります。テクニカル分析ではこの移動平均線を有効活用していくのがポイントになってくるのです。

買いと売りのエントリーチャンスはどこか?

移動平均線には、全体を平均化したものと、直近に比重を置いたものがあります。直近に比重を置いたものの方が、トレンドの転換には敏感に反応できます。ただし敏感な分だけ「ダマシ」に引っかかる危険性も増すので注意してください。

一般的に全体を平均した移動平均線を、「単純移動平均線」(Simple Moving Average)(SMA)と呼び、直近に比重を置いた移動平均線には、「指数平滑移動平均線」(Exponential Moving Average)(EMA)や「加重移動平均線」(Weighted Moving Average)(WMA)があります。「MACD」といった「インジケーター」によってはSMAではなく、EMAを採用しています。

今回はSMAを活用して「買いのシグナル」、「売りのシグナル」について確認しておきましょう。これは世界中の投資家が意識するチャート上での「心理的な節目」でもあります。為替相場は投資家心理も大きく反映されますので、確実に押さえておく必要があるでしょう。

基本的にはSMAは二本表示します。一本は「短期SMA」です。ローソク足5本分が目安になります。SMA(5)と表示されるケースが多いでしょう。もう一本は「短期SMA」です。ローソク足25本分が目安になります。こちらはSMA(25)という表示です。

「ゴールデンクロス」は、買いの最も典型的なシグナルになります。「中期線が上向きの状態で、短期線が中期線を下から上に上抜けした時」が、ゴールデンクロスで上昇トレンドの発生を示しています。(ローソク足の期間や移動平均線の期間設定によってやや異なります。中期線が下向きでも、短期線が上抜けしたらゴールデンクロスという見方もあります)

「デッドクロス」は、売りの最も典型的なシグナルです。「中期線が下向きの状態で、短期線が中期線を上から下に下抜けした時」が、デッドクロスで下落トレンドの発生になります。(こちらも期間設定によってはそのリアクションでは遅いので、中期線が下向きの状態でなくとも、短期線が中期線を下抜けしたらデッドクロスという見方もあります)

米ドル/日本円(USD/JPY)の日足チャートでは、2018年1月には中期線は上向きのままですが、デッドクロスとなり、1米ドル112円台から104円台までおよそ3ヶ月間下落が続いています。

逆に、2018年6月にゴールデンクロスが発生し、1米ドル110円台から113円台までおよそ40日間上昇トレンドが続きました。

このように移動平均線は、買いと売りのエントリーチャンスを教えてくれるのです。FXで勝つためにはとても重要な情報になります。

テクニカル分析のダマシをどう回避するのか?

ただし、テクニカル分析が万能というわけではありません。特に変動の激しい短い時間足のチャートの場合は、「ダマシ」が多く発生します。「ゴールデンクロスが発生してチャンスだ!」と思って買ったら、実はダマシで反発して下落したというようなケースです。

為替レートは、金利がどうだろうが、景気がどうだろうが、買う人が多くなれば上がり、売る人が多くなれば下がります。多数派が勝つことになるのですが、これは人数というよりも買う量、売る量に左右されます。短期の場合は、投機筋から巨額の資金が投入されることによって一時的に大きく変動することもあるのです。こうなるとテクニカル分析で対応するのにも限界があります。ですから超短期売買である「スキャルピング」のトレードは熟練者でなければ勝つことができないと言われているのです。

ダマシに対応するためには、チャンスと思ってもいきなりエントリーせず、少し静観してみることや、短い期間のローソク足チャートだけでなく、長い期間のローソク足チャートも確認してみること、その他の「オシレーター系の指標」や「トレンド系の指標」も参考にしてみることが大切です。

また流動性の高い時間帯(ロンドン時間やニューヨーク時間)に参加することで、投機筋の意向が反映されにくくなり、テクニカル分析が通用しやすくなります。テクニカル分析を最大限活用するためには、エントリーする時間帯にもこだわってみてください。

「時間があるからトレードしてみる」、「値頃感からトレードしてみる」ではなかなかトータルで勝てるようにはなりません。自分なりに勝てるポイントを見つけておくことがFXで勝つためのコツになるでしょう。