ダウ平均株価と米ドルの関係

「為替レート」には様々な要素が影響を及ぼします。例えば、米ドル/日本円(USD/JPY)の為替相場の場合、アメリカや日本の政策金利の差や変動、長期金利の差や変動は大きな要因になります。今後の利上げや利上げを予測する材料として、経済指標も注目されることになるでしょう。

それでは「株価」と為替レートには、どのような関係があるのでしょうか?

アメリカの株価指数として挙げられるのが「ダウ平均株価」(DJI)です。ダウ工業株30種のことで、ニューヨークダウやニューヨーク平均株価とも呼ばれています。多くがニューヨーク証券取引所に上場している企業だからです。

ダウ平均株価は、わずか30銘柄の平均株価を指数化したものですが、その面々はアップル、ゴールドマン・サックス、ナイキ、マクドナルド、ボーイング、ゼネラルモーターズ、アイ・ビー・エム、マイクロソフト、インテル、VISAなど世界を代表する大企業ばかりです。

ダウ平均株価が堅調であるということは、アメリカの景気が好調だと考えることができるでしょう。その点ではさらに、流動性がある大型株から選ばれた500銘柄の時価総額を指数化した「SP 500」(SPX)も参考になります。

アメリカ経済が好調であれば、米ドルが買われるのは、自然の流れですので、「円安米ドル高」になる傾向はあります。しかし、必ずしも相関があるわけではありません。「ダウ平均株価が下がったから米ドルも下落するとは限らない」ということです。ダウ平均株価は、あくまでも為替変動の要因のひとつに過ぎません。

仮にダウ平均株価が下がった場合、「なぜダウ平均株価が下がったのか?」、「市場はリスク回避なのか?」といった視点が重要になります。為替相場に対しては動意薄というケースもあれば、原因によっては米ドル下落に繋がることも充分に考えられるからです。

日経平均株価と日本円の関係

日本で、ダウ平均株価と同じような扱いになるのが、「日経平均株価」(N225)です。日経225とも呼ばれています。その名の通り、東京証券取引所一部上場の企業の中から225銘柄を選び、その平均株価指数になります。

アメリカのダウ平均株価との違いは銘柄数だけでもわかりますが、大きく異なる特徴は、「日経平均株価に該当する銘柄は輸出企業が多い」ということでしょう。ハイテク関連や自動車業などは輸出で利益を出している傾向が強く、円高になると売り上げが落ち、業績に大きく影響することになるのです。

一般的には、株価指数が堅調だということは、その国の経済状況が好調であることを示しているので通貨高になる傾向がありますが、日本は逆行しています。日経平均株価指数に該当する輸出企業が多いために、円高に傾くと日経平均株価指数は下がります。

アメリカの場合、ダウ平均株価に該当する企業は内需企業も多いので株価と為替レートに強い相関が見られないのですが、日本の場合は相関があると考えるべきでしょう。

さらに「投資家のリスクヘッジ」が影響しています。日本の株式に投資するのと同時に、円を売ってリスクマネジメントを行っているのです。逆に日本の株式を売却した場合は、その資金で円を買います。

海外の日本投資家は、株価が下がると証拠金を積み増しするために円を買うことになります。株価が上がると余剰金が発生するので円を売る動きになります。

このようにして「株価が上がると、円安」、「株価が下がると、円高」という関係性が生まれているのです。

実際に株価が急落した、2011年の東日本大震災を確認してみましょう。

大震災が発生する直前までは日経平均株価は堅調で、1万円を突破していましたが、被害状況が判明するに従って日経平均株価が下がっていきました。わずか5日という期間の中で、日経平均株価は1万円台から8,000円台まで急落しているのです。

為替レートもやはり、「株価が下がると、円高」を踏襲しています。米ドル/日本円(USD/JPY)は、大震災前には1米ドル82台だったのが、1週間の中で1米ドル76円台まで米ドルは

急落、急激な円高が進むことになりました。

円高に傾いた理由としては、上記の内容と共に、2001年にアメリカで発生した同時多発テロ以降、「有事の米ドル買い」から「有事の円買い」に移行していた点、さらに保険金の支払いのために保険会社が海外の資産を円に換金するだろうという思惑も重なっています。

2018年現在の株価と為替レート

大震災後、極端な円高状態が続いていましたが、2013年以降は円安ドル高にシフトしていっています。タイミング的には、2012年に発足した安倍政権の「アベノミクス」の効果だと考えられますし、さらに20134月に日本銀行総裁に就任した黒田東彦総裁の量的・質的金融緩和が大きな影響を与えています。

日銀は市場に供給する通貨量「マネタリーベース」を倍増させます。この大胆な金融政策によって、日本国債10年利回りは史上最低水準を更新することになり、市場に出回る通貨量が増えることで、日本円は下落していったのです。つまり円安ドル高になり、輸出企業に有利に働くわけです。

円安に振れると同時に、日経平均株価も回復に転じました。日経平均株価が1万円台を突破するだけでなく、その後も堅調に上昇を続け、2015年には2万円台を突破したのです。2016年に一時15,000円台まで急落した時期もありましたが、2017年には再び2万円台まで回復し、20189月には一時、25,000円台に迫るところまで伸ばしました。その後も2万円台を維持している状態です。

米ドル/日本円(USD/JPY)も同じように堅調で2015年には、一時期1米ドル124円台の高値をつけています。2016年には日経平均同様、一時大きく下げて100円を割り込む場面もありましたが、その後回復して、201811月時点では1米ドル114円台まで上昇しています。

2018年後半は特に「日経平均株価高、円安」という状態が続いています。

これを見ても日経平均株価と米ドル/日本円(USD/JPY)は相関が強いということが言えるでしょう。クロス円の通貨ペアで取引する際も、アメリカの景気状況、日本の経済状況、日経平均株価の推移は注目する必要があります。