金利と為替レートの関係

為替相場の動きを予測する「ファンダメンタルズ分析」では、様々な経済状況を参考にしますが、その中で特別注目されるのが「金利」です。

投資家としては、金利の高い国と低い国のどちらの銀行に預金するとメリットがあるかと考えた場合、当然金利の高い国を選びます。その方がより高い利息を得ることができるからです。ですから金利が高い国に資金が流れやすい傾向になります。その国の通貨が買われ、通貨量が増えるために通貨高になるのです。

つまり「金利が上がると、通貨高になる可能性が高い」ということです。

金利には、「短期金利」と「長期金利」があります。

短期金利の柱は、国の「政策金利」です。日本では中央銀行にあたる日本銀行が金融政策決定会合で決定します。アメリアでは中央銀行にあたるのが「連邦準備制度理事会」(FRB)です。連邦準備銀行の統括機関になります。FRBは「連邦公開市場委員会」(FOMC)を開催し、短期金利の誘導目標である「フェデラルファンドレート」(FF金利)を決定します。

金利が変動する要因はなんでしょうか?

好景気が続いた場合、消費や投資が過熱気味になりインフレ懸念が生じますので、「金利の引き上げ」を行います。市中に出回る通貨量を減らし、インフレ懸念を抑えるためです。

逆に景気が後退した場合は、市中に出回る通貨量が減ってしまうので、それを増やすために「金利の引き下げ」を行うことになるのです。

ですから、金融政策が行われ、政策金利が変更となる場合は要注意です。トレンドの転換期になる可能性が高いと考えるべきでしょう。

市場では発表される経済指標を参考にして、今後の利上げ、利下げの予測が行われ、予測の段階でも為替レートは変動していくことになります。

アメリカの政策金利(FF金利)と為替レートとの関係

それでは実際にアメリカの政策金利と米ドル/日本円(USD/JPY)の為替レートの動きを確認してみましょう。

2007年に入り、しばらく5.25%で推移していたアメリカの政策金利は9月に大きく引き下げられることになります。サブプライムローン問題によって世界同時株安になることを阻止するためです。米ドル/日本円(USD/JPY)は、2007年6月が高値の1米ドル124円台を付けていましたが、ここから急落していくことになります。

9月に4.75%、10月下旬に4.50%、12月に4.25%、2008年1月には3.50%、3.00%まで段階的に政策金利は引き下げられていきます。この間、ダウ平均株価は急落を続けており、FRBはさらに利下げを行うことになります。3月に2.25%、4月に2.00%、10月には1.50%、1.00%となったのです。

米ドルは、4月にやや回復の兆しがあったものの、リーマンショックによって再び急落し、12月には、1米ドル87円台まで円高ドル安が進んでいます。アメリカはここで政策金利0.25%(誘導目標は0.00%~0.25%)までさらに引き下げ、アメリカの歴史上初となるゼロ金利政策に移行することになるのです。

この金融政策によってダウ平均株価は上がり始めます。米ドルも101円台まで回復しましたが、ゼロ金利政策は継続されたため金利は上がらず、アメリカ国債の格付けが引き下げられるというサプライズも重なって、2011年10月には1米ドル75円台の安値を付けています。

結局アメリカは2015年の12月までゼロ金利政策を続けました。

しかし、それ以前の2013年、日銀の黒田東彦総裁が、量的・質的金融緩和を発表し、マネタリーベースを倍増するなどして円安に振れており、2015年6月には1米ドル125円台まで急騰しています。

2016年にはイギリスのEU離脱問題などもあり、市場のリスクオフの流れで、1米ドル99円まで下げた場面もありましたが、2013年以降は日本の金融政策、アメリカの金利上昇によって米ドル/日本円(USD/JPY)は上昇トレンドといえます。2018年11月時点では、アメリカの政策金利は2.25%、1米ドル113円台です。

その期間、日本は2008年12月以降、ずっと政策金利が変わらず0.10%が続いています。このアメリカと日本の金利差が、円高ドル安に振れることを防いでいる大きな要因になっていると言えるでしょう。

アメリカ国債10年利回りと為替レートの関係

短期金利は、政策金利によってコントロールすることができますが、長期金利は、長期の資金の需給によって変動していきます。その長期金利の柱が、「国債10年利回り」です。

国債10年利回りは、個人向け住宅ローンの金利や、企業への資金融資の金利の目安になりますので、景気や経済に大きな影響を及ぼすことになります。もちろん為替レートへの影響力も大きなものがあります。

例えば、アメリカ国債10年利回りが上昇するということは、「アメリカ国債が売られ、価格が下がっている」という状態です。これは市場がリスクオンとなり、安全な国債からリスクの高い資産へ資金が流れていることを示しているのです。つまり、アメリカの経済状況が改善され、景気が上向きであるということです。

「アメリカ国債10年利回りが上昇すると、米ドルが買われやすくなり、通貨高となる可能性が高まる」ということになります。

逆に、アメリカ国債10年利回りが下落するということは、「国債が買われ、価値が上がっている」という状態です。これは市場がリスクオフとなり、リスクの高い資産からより安全性の高いアメリカ国債に資金が流れていることを占めています。つまりアメリカの経済状況が悪化、もしくは景気後退であるということになります。

「アメリカ国債10年利回りが下落すると、米ドルが売られやすくなり、通貨安となる可能性が高まる」ということになるのです。

もちろん為替レートは金利だけで決まるものではありません。政治の安定度や地政学リスクなどが関わってきます。特に近年のアメリカは諸外国と貿易を巡って衝突する傾向が強いため、様々な視点から分析していく必要があるでしょう。

また、国家財政が不安定のため高インフレとなったり、資源国であれば原材料高騰などによって金利が引き上げられた場合は、不安要素から通貨が売られやすくなる傾向もありますので、新興国では注意が必要になります。

ただし、正常なインフレによって金利が上がっている状態であれば、為替レートに大きな影響を及ぼすことは間違いありません。2019年になってもアメリカは段階的に利上げを行っていくのか、パウエルFRB議長のコメントには世界中の注目が集まっています。