トルコリラのスワップ金利

FX(外国為替証拠金取引)では様々な国の通貨を扱うことが可能ですが、その中でも政策金利の高い新興国通貨として注目されているのが、「トルコリラ」(TRY)になります。

2018年に入り、8.00%ほどで推移していた政策金利ですが、インフレ率の上昇やトルコリラの下落などによって、強力な金融引き締めが始められました。政策金利は、5月には16.50%、6月には17.75%となり、9月には24.00%まで上がってきています。

エルドアン大統領の反対もあって、なかなかトルコ中央銀行も利上げに踏み切れていませんでしたので、資金はより安全なアメリカなどに流れてしまっていましたが、ここまで政策金利が上がったことで、トルコリラは9月以降上昇しています。

トルコリラといえば、気になるのは「スワップ金利」です。マイナー通貨のために取り扱っていない業者もありますが、日本国内で取り扱っている業者を比較すると、2018年11月段階では、100円~125円というのがトルコリラ/日本円(TRY/JPY)のスワップ金利です。

スワップ金利とは、外貨預金の利息と同じインカムゲインです。チャートを分析して為替レートの動向などを予測する必要もなく、売買を繰り返して為替差益を生み出す必要もありません。ポジションを保有し、後は放置しておけば、毎日収益があるのです。まさに完全な不労所得といえます。

上記したのは1万通貨のポジションを保有した際のスワップ金利です。レバレッジが1倍で、1トルコリラが21円だとして、21万円の証拠金が必要になります。これだとポジションが1Lotなので、毎日125円のスワップ金利の利益です。

ここでレバレッジを効かせるとどうなるでしょうか?

仮に30万円の証拠金が用意できるのであれば、25倍のレバレッジで25Lot保有することで、毎日3,125円の利益になります。30日で93,750円、1年間でおよそ112万円です。しかもスタート段階で9万円の余剰金もありますので、為替レートの下落も少しであれば耐えることもできます。

もちろんスワップ金利も変動していきますので、すべてが計算通りにはいきませんが、スワップ金利を狙って長期の資産運用をするのであれば、トルコリラはとても魅力的な通貨であるといえます。

トルコリラの為替レートの変動

ハイレバレッジに設定するのであれば、できるだけ余剰金は多く用意しておきたいものです。レバレッジ25倍で、25Lotものポジションを保有した場合、仮にトルコリラ/日本円(TRY/JPY)が1円下落すると、25万円の損失となります。30万円の証拠金ではあっという間に強制ロスカットです。

下降トレンドで、トルコリラのロングポジションを多く保有している状態は命取りとなります。

では、2018年11月でのトルコリラ/日本円(TRY/JPY)はどのような傾向なのでしょうか?

2018年1月の時点では1トルコリラ30円台でした。ここを目安にすると、11月時点では21円台なので下降トレンドになります。スワップ金利狙いで25Lotポジションを保有していたとしたら、この期間で225万円の損失となります。

ただし、細かく為替レートの動向を見ていくと、8月に最安値の15円台を付けていますが、それ以降は回復傾向です。8月はトルコ在住のアメリカ人牧師を拘束した問題で、トルコとアメリカが対立したタイミングです。トルコは解放要求を拒否し、それに対し、アメリカのトランプ大統領は、トルコの鉄鋼やアルミニウムの関税を2倍にするとTwitterで宣言しました。さらにトルコでインフレが高まっているにもかかわらず、エルドアン大統領は利上げ拒否宣言をし、トルコリラは暴落したのです。いわゆる「トルコショック」です。

その後、格付け会社のS&Pやムーディーズが相次いでトルコの格付けを一段階引き下げるなどのネガティブニュースもありましたが、トルコ中央銀行が、外国の投機筋がトルコリラを売って外貨を買う制限を設け、また、政策金利を24.00%まで上昇させたことで落ち着きを取り戻しています。

8月の安値でトルコリラを買っていた投資家にとっては喜ばしい状態です。安定してスワップ金利を得ることができるだけでなく、為替レートも1トルコリラ6円も急騰していますから、25Lot保有していれば、150万円の為替差益が見込めるのです。

トルコリラを扱う際の注意点

トルコリラを扱う際の注意点はどこにあるのでしょうか?

それはここまでご紹介してきたように、「変動が大きい」通貨だということです。ハイレバレッジで多くのポジションを保有している場合や、含み損に耐えられるだけの余剰金がない場合は、トルコリラが急落すると同時に大きな損失を抱え、強制ロスカットになってしまいます。

米ドル/日本円(USD/JPY)といったメジャー通貨のペアの場合は、ある程度のレンジを上下する為替変動になりますが、新興国通貨の場合はレンジが広すぎます。近年を例にしてみると、リーマンショック前は1トルコリラ90円台。それが、2014年の年末時期には1トルコリラ53円台となっています。

問題はリーマンショック以降も下降トレンドが続いていることです。2016年にクーデター未遂事件が発生。首謀者とみられるアメリカ在住のイスラム教ギュレン師の身柄を巡ってトルコとアメリカは激しく対立しました。そしてピザ発給相互停止まで問題が深刻化、2017年10月には史上最安値の1トルコリラ27円台まで急落しています。しかも2018年に入っても最安値を更新している状態です。

トルコの治安は確実に改善されています。2018年には魅力ある新興市場で世界第2位に選ばれています。しかし、アメリカとの関係によって為替レートが暴落するリスクを抱えているのは確かです。トルコリラを扱う際は、アメリカとの情勢に注目しておく必要があるでしょう。

また、政策金利がどんどん上がっていますが、インフレ率はさらにそれを上回るような状態です。消費者物価指数の前年比は、これまで10.00%程度だったのが、2018年5月に12.15%、6月に15.39%、7月に15.85%、8月に17.90%、9月に24.52%、そして10月に25.24%と右肩上がりです。実質金利はマイナスなのがトルコの実情というわけです。

せっかく増やしてきたスワップ金利も、為替差損によって一発で吹き飛びます。それだけの変動率がトルコリラにはあるのです。どこまでポジションを保有し続けるのか、どこで利益確定するのか、その見極めがトルコリラには重要になってくるでしょう。

「リスクマネジメント」の力が試されるのがトルコリラであり、ギャンブル感覚で扱うにはリスクが高いということを知っておくべきです。