イギリスポンドの取引が投資家に人気な理由
FX(外国為替証拠金取引)では、「イギリスポンド」(GBP)は注目されるメジャー通貨です。イギリスポンド中心の通貨ペアでトレードしている投資家も多くいます。
なぜイギリスポンドは人気を集めているのでしょうか?
それはやはりイギリスポンドの「ボラティリティ」(変動率)が高いことが挙げられます。イギリスポンド/日本円(GBP/JPY)では、1日に2円、3円変動することは珍しいことではありません。
短期間で大きな利益を出していきたい投資家にとっては、米ドル/日本円(USD/JPY)やユーロ/日本円(EUR/JPY)よりも魅力なのです。ですからスキャルピングやデイトレードといった短期トレードをメインにしているトレーダーは、イギリスポンドを取り扱っているケースが多くなるのです。
イギリスポンドは戦前までは世界の基軸通貨でした。そういった背景があるので、イギリスには各国の企業だけでなく、証券会社や銀行といった金融機関が集中しています。イギリスはEUの中でも特別な存在なのです。だからこそ欧州連合(EU)に加盟してからも、イギリスは自国の通貨を使い続けており、イギリスポンドの取引量は、米ドル、ユーロ、日本円に次ぎ世界第4位です。
イギリスの2017年の名目GDPは2兆550億ドルで、ドイツに次ぎ世界第5位です。イングランド銀行(BOE)が発表している政策金利は、2016年8月から2017年10までは0.25%でしたが、2017年11月より0.50%に利上げされ、2018年8月から0.75%となっています。
金利面では日本よりもイギリスの方が高いので、イギリスポンド/日本円(GBP/JPY)ではロングポジションだとスワップ金利がプラスとなる取引業者がほとんどです(一部マイナスの取引業者もありますので確認が必要です)。1万通貨でプラス20円が目安となりますが、スワップ金利を高く設定している取引業者では、32円をつけています(2018年12月27日現在)。
スプレッドは、米ドル/日本円(USD/JPY)やユーロ/日本円(EUR/JPY)といったその他のメジャー通貨ペアよりも広めです。目安は1.0pipsで、最も狭い取引業者で、0.89pips。広い取引業者だと3.4pipsや、6.0pips、8.0pipsになります。イギリスポンドでスキャルピングなどをする場合は、やはりスプレッドが狭い取引業者を選ぶべきでしょう。
イギリスポンドを取り扱う際の注意点
イギリスポンドを取り扱う際の注意点はふたつになります。
ひとつはそのボラティリティの高さゆえに、「ギャンブル的な要素が強くなる」という点です。短期間で大きく変動するために大きな利益を出すことも可能ですが、逆に大きな損失に繋がるリスクもあります。
特にイギリスポンド/日本円(GBP/JPY)は突発的に上下するので、為替相場の予測が難しく、上昇トレンドだと思って買うと下がり、下落トレンドだと思って売ると上がるというケースが多くなりがちです。FX中級者、上級者向けの通貨といえるでしょう。イギリスポンドだけは手を出さないと決めているトレーダーもいるぐらいです。
損切りの設定の幅が狭いと、損切りが続き、損切り貧乏になってしまいます。イギリスポンドを扱う際は証拠金を多めにして、損切りの幅を広げていった方が勝てる確率は高まります。すぐに反転してくる可能性が高いからです。余剰金に余裕がない場合は、かなりのハイリスクになりますのでイギリスポンドを取り扱うのは避けるべきでしょう。
さらに注意すべきは、イギリスが現在とても微妙な立場だという点です。
2016年の国民投票でEU離脱(ブレグジット)が決まりましたが、EUの離脱協定に合意するかどうかは議論されている段階です。メイ首相は2019年1月には決断するということですが、仮に合意なきEU離脱となった場合、様々な問題が浮上してきます。
EU加盟国との政治的な結びつきに支障が生じてきますし、通関手続きなども発生してきます。EUでの営業許可を失うこととなりますし、他国の金融機関の撤退も考えられます。それに伴ってイギリスのインフレや生活水準は低下し、対ユーロにおいても、対米ドルにおいてもイギリスポンドは急落することになると予想されています。
はたしてソフトブレグジットとなり、経済的なダメージを最小限に抑えることができるのか、ハードブレグジットとなり、経済的な混乱をきたすのか、見極める必要があるでしょう。
2017年から2018年にかけてのイギリスポンド/日本円(GBP/JPY)の推移
それでは2017年から2018年にかけてのイギリスポンド/日本円(GBP/JPY)の推移を具体的に確認していきましょう。
2017年は1イギリスポンド135円40銭を底に、天井は153円40銭ほどというレンジで上下を繰り返していました。
2018年に入り、2月に156円60銭の高値をつけた以降は一転、1ヶ月ほど下落トレンドが続き、145円を割り込んでいます。そこから1ヶ月は逆に上昇トレンドとなり、153円85銭近くまで上がりましたが、すぐに反落、5月下旬には143円台まで売られることになります。
しかし、ここからもみ合いが続き、8月下旬には140円台を割り込むところまで下落。さらにここから反発して9月下旬には149円台まで戻しましたが、ブレグジットの問題が不透明な状態が続き、12月下旬には再び140円台を割り込んでいます。
こうして見てみると、レンジ内で短期間のうちに大きく上下を繰り返していることがわかります。
イギリスは北海油田があり資源国にも位置付けられています。また、EU最大級の天然ガス生産国であり、輸出国です。イギリス経済は、当然のように原油価格にも左右されることになりますので、10月以降の原油価格の下落(40%ほどの急落)もイギリスポンド下落に影響を与えていると考えられます。
EUに加盟していますので、やはり間接的にユーロの影響も受けやすいのがイギリスポンドです。ユーロもまた10月以降、下落が続いている状態になります。
今後のイギリスポンドの行方は、とにかくブレグジットがどこに着地するのか、その時にBOEがどのような対策を講じるのかによって大きく変わっていくでしょう。低金利を継続していく方向性が強いですが、利上げに踏み切る可能性もあります。2019年の年明けは、まずはイギリスの動向から目が離せません。