トレンド系指標とオシレーター系指標の併用

チャートを分析しながら節目や投資家心理を探っていくのが「テクニカル分析」になります。テクニカル分析用のインジケーターは取引業者のツールによってやや異なりますが、メジャーな「トレンド系指標」と「オシレーター系指標」はほとんどのツールで使用可能です。

トレンド系指標は、為替相場のトレンドの強弱を示すもので、はっきりとトレンドが発生した場合は「順張り」をしてトレンドに乗ります。通貨ペアの性質にもよりますが、長ければ1年、2年とトレンドが続く場合もありますので、安定してキャピタルゲイン(為替差益)で稼ぐことができます。

オシレーター系指標は、為替相場の買われ過ぎや売られ過ぎを示すもので、レンジ相場であれば「逆張り」をしてキャピタルゲインを稼いでいきます。特にメジャー通貨同士の通貨ペアでは、相場の70%~80%はレンジ相場になる傾向がありますから、有効です。

トレンド系指標とオシレーター系指標は、互いに弱点を補完し合いますので、チャートにはどちらも表示しておくことがおすすめです。

トレンド系指標だけだと、小幅なもみ合いの状態では曖昧な判定となり判断が難しくなります。逆にオシレーター系指標だけだと、強いトレンドが発生した際に上下のどちらかに張り付いてしまい、ほとんど活用できなくなってしまいます。

レンジ相場で推移しているのか、トレンドが発生している状態なのかを両方のインジケーターを使って確認していくと、FX(外国為替証拠金取引)で勝てる確率も高まっていきます。

そのためにもいろいろなインジケーターを試しに使ってみましょう。実際に使ってみなければ、自分のトレードスタイルに合っているのかわからないからです。いろいろ試してみて絞ったのであればいいですが、他を使用していない状態で決めてしまうのはもったいないのではないでしょうか。

今回はトレンド系指標として人気のある「MACD」についてお伝えしていきます。

MACDの活用方法

MACDのインジケーターは「マックディー」と呼ばれています。Moving Average Convergence/Divergence Trading Methodの略称です。直訳すると、移動平均・収束・拡散トレード手法となります。1979年、シグナラート・コーポレーション社のジェラルド・アペル氏によって開発されました。

MACDでは「移動平均線」を利用していきますが、単純移動平均線(SMA)ではなく、指数平滑移動平均線(EMA)です。両者の違いは、SMAが一定期間の平均値であるのに対し、EMAは直近の値を重視しつつ、期間以前の値もわずかに影響するようになっていることです。

MACDを使用する場合は3つの期間の設定が必要ですが、基本的には初期設定の期間を多くの投資家が参考にしているので、変更しない方がいいでしょう。

「シグナル」は9、「短期EMA」は12、「中期EMA」は26です。サブチャートに表示されるMACDは、「EMA(12)-EMA(26)」という計算結果で、一本の折れ線グラフとなります。短期EMAの値が大きければプラスになりますが、逆に小さければマイナスです。ですからMACDの基準は「ゼロ」なのです。

シグナルはさらにこのMACDのEMAです。MACDとは色違いの折れ線グラフで表示され、さらに「MACD-シグナル」の結果が棒グラフで表示されています。棒グラフは、MACDがシグナルよりも値が大きければプラス、小さければマイナスになります。

分析の仕方自体はシンプルで、MACDとシグナルのクロスに注目していきます。

まずは「買いのサイン」ですが、これはMACDとシグナルがゼロより下で推移しており、MACDがシグナルを下から上抜けした際にゴールデンクロスとなります。上昇トレンドが発生する可能性が高まります。

「売りのサイン」は、MACDとシグナルがゼロより上で推移しており、MACDがシグナルを上から下抜けした際にデッドクロスとなります。ここから下落トレンドになる可能性が高いことを示しています。

もみ合いとなると、MACDとシグナルが引っ付いた状態となり判別が難しくなりますが、その際はMACDのゼロがレジスタンスラインやサポートラインになる傾向がありますので、参考にしてみてください。ですからMACDには、オシレーター系指標的な要素も含んでいることになります。ただし厳密にはレンジ相場では使いにくいですので、もっとはっきりとわかるオシレーター系指標と組み合わせていくのがいいでしょう。

2017年から2018年にかけての米ドル/日本円(USD/JPY)で確認

それではMACDを使って、2017年から2018年にかけての日足チャートで、米ドル/日本円(USD/JPY)の推移を確認していきましょう。

2017年8月に入ってからはMACDとシグナルはマイナスで推移していますが、9月を過ぎてからMACDがシグナルを上抜けします。ゴールデンクロスです。この時、強い上昇トレンドが発生し、1米ドル107円30銭あたりから11月にかけて114円70銭あたりまで上昇しています。

しかし今度はプラス圏で、MACDがシグナルを下抜け、デッドクロスとなり下落トレンドが発生。2018年の3月まで続き、104円60銭あたりまで急落しています。

3月下旬にはマイナス圏でMACDがシグナルを上抜けし、上昇トレンドが発生。5月下旬には111円39銭まで回復します。その後またデッドクロスが発生し、108円10銭あたりまで下落するものの、MACD・シグナルともにプラス圏を維持し続け、ゼロラインがサポートラインとなってもみ合いとなりました。

7月にはデッドクロス、8月にはゴールデンクロスとなり、10月には114円50銭あたりまで上昇しましたが、その後はデッドクロス、ゼロ付近でもみ合い、そしてまたデッドクロスと続き、値を下げて、12月下旬には110円をつけています。

2018年終了時点では、MACD・シグナルともにマイナス圏で推移している状態が続き、下落トレンド中です。2019年のどの段階でMACDがシグナルを上抜けしてくるのかが注目されます。

ちなみに週足チャートでは、MACD・シグナルともにプラス圏でちょうどデッドクロスが発生したタイミングで2018年を終えています。週足チャートで分析すると、ここから本格的な下落トレンドになっていくことが予測されます。この場合の節目は、3月に記録した104円60銭あたりになってくるでしょう。

月足チャートではもみ合いの状態でゼロ付近を推移しています。仮に強い下落トレンドが発生するようだと、2016年に記録している99銭45銭あたりが大底の節目になってくるのではないでしょうか。