国内の個人のFX口座ではレバレッジは最大25倍までだが

レバレッジとは「てこ」のことであり、小さな資金で大きな取引を行えることを表しています。ほんの10年前までは400倍や500倍にレバレッジを設定することができました。100万円の証拠金で、5億円分の外貨の売買が可能だったのです。

2010年にレバレッジ規制が導入され、最大で50倍となりましたが、翌年には最大で25倍に規制されています。これは現在でも継続されており、100万円の証拠金であれば、最大のレバレッジでも2,500万円分の外貨取引しかできません。

これは、超ハイレバレッジによって、FX(外国為替証拠金取引)がギャンブル化している状態を憂慮し、「過当投機防止」、「投資家保護」の観点から、金融庁の指導が入ったからです。

しかし、201712月になって金融庁から「FXの規制見直しのために有識者検討会を設置する」という発表がありました。ここでは具体的な数字が示されませんでしたが、日本経済新聞には、レバレッジを現行の25倍から10倍まで引き下げる議論が行われると掲載されています。

2018年に入り、何度も有識者検討会が開催されていますが、レバレッジが10倍まで引き下げるというような見解は発表されていません。今後どのような議論が行われていくのかしっかりと見守っていく必要があります。

仮にレバレッジが10倍まで引き下げられた際には、現在レバレッジ25倍で保有しているポジションは一斉決済ということになるでしょう。含み損を抱えて塩漬けしているようなポジションがあれば要注意です。強制ロスカットと同じ状態になってしまいます。

本当にハイレバレッジはハイリスクなのか?

一般的には「ハイレバレッジはハイリターン」と考えられています。

為替差損で5万円の含み損が発生した場合、レバレッジが25倍であれば、含み損も25倍の125万円になります。だからハイレバはハイリスクだという話です。しかし、これはレバレッジについて誤解をしています。

FXにおいて重要になるのは、「ポジションに対して拘束される証拠金の割合」と「どれだけの余剰金があるのか」ということです。

例えば、1米ドル110円という為替レートだったとします。基本通貨が1万通貨で設定されている取引業者を利用するのであれば、レバレッジ1倍だと110万円の証拠金が必要になります。ぴったり110万円の証拠金が準備できたとすれば、証拠金維持率100%ですので、米ドル安に1銭でも進めば証拠金維持率100%を下回ってしまいます。

同じ条件でレバレッジ25倍を利用したとしましょう。この場合、1万通貨を運用するのに必要な証拠金は44,000円です。44,000円で1Lot分だけロングポジションを保有しました。証拠金は110万円ありますので、余剰金は1056,000円です。米ドル安が1円進もうが、5円進もうが充分な証拠金維持率をキープできますので、強制ロスカットになるようなことはありません。

ここで1米ドル110円から1米ドル111円に上昇したとしましょう。レバレッジ1倍でも、レバレッジ25倍でも保有しているポジションは1Lotですから、含み益は同じ1万円です。逆に1米ドル109円に下降したとしても、含み損は同じ1万円になるのです。

では、どちらがより「リスクマネジメント」できているといえるでしょうか?

証拠金をがっちり拘束されて、余剰金がない方がリスクは高いでしょう。証拠金維持率が100%を下回るとマージンコールが発生する取引業者もありますから、追証する必要性も出てきます。

つまり、「ハイレバレッジだから危険」、「ローレバレッジだから安全」という訳ではないのです。ポイントは「自分の証拠金に対して、どのくらいの量のポジションを保有しているのか」ということになります。

では、ハイレバレッジでリスクが高くなるのはどのようなケースなのでしょうか?

自分がどれだけの損を許容できるのか考えよう

ハイレバレッジでリスクが高くなるのは、「証拠金めいっぱいまでポジションを保有してしまう」というケースになります。これはFX初心者の頃はよくやりがちです。FX中級者でも、高額のスワップ金利を狙って限界までポジションを保有してしまうことがあります。これはとてもリスキーです。

先程の例を使ってみると、1米ドル110円、基本通貨は1万通貨でレバレッジ25倍に設定していたとします。1Lotポジションを持つのには、44,000円で済みますが、これだと1米ドル1円上昇しても1万円の利益しかありません。限界までポジションを保有すれば25Lotですから、1米ドル1円上昇すれば25万円の利益になります。まさに25倍の利益を出すことができるようになるのです。

しかし、ここで問題なのは余剰金がゼロになっていることです。自分がどれだけの損を許容できるのかまったく計算していないトレードになってしまっています。

さらに、1米ドル109円に下降したとしましょう。レバレッジが25倍でもポジションが少なければ余剰金があるので含み損に耐えられます。しかし、ポジションを限界まで持ってしまうとそんな余裕はありません。

25Lotですから25万円の含み損になります。110万円あった証拠金が85万円まで減りました。これだと証拠金維持率100%を下回っています。1米ドル109円で25Lotのポジションを持ち続けるためには、24万円の追証が必要になります。さらに米ドルが下降すれば、さらに追証しなければならなくなります。

為替レートは上がりもすれば下がりもします。ある程度の含み損が出ても、待っていれば為替レートは回復し、逆に含み益になる可能性もあるのです。しかし、強制ロスカットになってしまえばその可能性はゼロになります。最悪な状態で損失確定をしなければならいのです。

日本金融局(JFSA)の監督下にない海外のFX取引業者では、888倍など信じられないぐらい超ハイレバの取引が可能になっています。もし国内のFX取引でレバレッジ10倍の規制が導入された場合、海外の取引業者に資金は流れていくでしょう。

どのようなレバレッジで取引するにしても、「自分が持てるポジションの量」、「自分が許容できる損失」をしっかり確認しながら、リスクマネジメントしていくことを忘れないようにしてください。これはFXに勝つための必須条件です。

レバレッジが高いとリスクが高いというのは誤解です。リスクが高くなるのは自分の状況を冷静に認識できていないからだということがいえるでしょう。