スキャルピングのコツ

FX(外国為替証拠金取引)には、いくつかの投資スタイルがあります。

ひとつはスワップ金利のメリットを最大限に活用した長期売買です。チャートを確認するのも一日に一度か二度で、ほとんどトレードすることなく数年間に渡りポジションを保有し続けるケースも珍しくありません。

中期売買になると「スイングトレード」と呼ばれ、一週間を目安にポジションを保有します。スワップ金利を期待しつつも、大きな利幅が取れた場合は決済しますので、ポジションの保有期間は二日間ぐらいの場合もあります。

逆に日をまたがずにポジションを決済してしまうのが「デイトレード」です。短期売買となりますので、狙う利幅も大きくて100pips、リスクリワード・レシオによっては10pipsで決済する人もいます。

ここからさらに利幅を小さくすると「スキャルピング」になります。1pips5pipsほどの利幅ですぐに利益確定しますのでポジションを保有している期間も数秒から数分程度になります。超短期売買を繰り返し、小さな利益を積み上げていく投資手法です。

利幅が小さい分、すぐに利益確定できますが、「損切り」できなければ9回勝っても1回の負けで利益はすべて吹き飛びます。スキャルピングを行う場合、損切りの設定は絶対に必要です。

また、利幅が小さくなるほどトレードの回数は増え、スプレッドの負担が大きくなります。スキャルピングといえどもリスクリワード・レシオは「1.5」以上には設定したいところです。利益確定が3pipsであれば、損切りは2pipsということになります。相場の動きがわかりやすい時間帯であれば高い勝率をキープできるはずです。

ボラティリティが高い時間帯と注意点

スキャルピングのデメリットは、パソコンやスマホのチャート画面から目を離すことができない点です。小さい利幅を大きな利益まで積み上げるには、時間が必要になるからです。長時間チャートに張り付けになるため、体力と共に精神力が要求されます。

精神力が低下していくと、それにともない集中力も緩慢になるため、ミスが生じやすくなります。むやみに長時間トレードしていても効率は悪くなる一方です。効率よくスキャルピングで利益を積み上げていくには、ある程度時間や取引回数を決めておく必要があるでしょう。

短時間でトレード回数を増やしていくには、ボラティリティ(Volatility)(為替レートの変動率)が高い時間帯が狙い目です。ポイントに上げられるのは東京時間、ロンドン時間、ニューヨーク時間がオープンして2時間あたりが目安になります。東京時間では955分にかけて仲値がありますので、仲値不足になれば米ドル買いが盛んになることが期待できます。

ロンドン時間になると、東京時間からトレンドが反転する可能性が高まりますので注意が必要ですが、そこをしっかり見極められれば、相場が動きにくい東京時間よりもはるかに効率的に利益を出すことが可能です。

日本時間の2130分(冬時間であれば2230分)からは、アメリカで経済指標が発表され、ニューヨーク時間もオープンすることになります。ロンドン時間とニューヨーク時間が重なるので取引量も多く、値動きが活発になるのです。

ボラティリティが高まりますので、スキャルピングのチャンスです。一日20回ぐらいのトレードであれば、この時間帯だけでも充分でしょう。

ただし、注意しなければならないのは、非常に影響力のある経済指標が発表された直後です。キング・オブ・経済指標と呼ばれるアメリカの「雇用統計」や、FOMC(連邦公開市場委員会)の政策金利発表時の声明文、「GDP」の中でも四半期に一度発表される「速報値」などはサプライズになりやすい傾向があります。

売買の注文が殺到すると、ボラティリティが驚異的に高まるだけでなく、スプレッドが広がり、スリップページが発生する危険性もあるのです。スキャルピングをするにはリスクが高すぎる状態といえるでしょう。

経済指標の内容がポジティブサプライズであったとしても、一方的に上がるわけではなく、大きな反発を挟みながら上下するため、一瞬で損切りというトレードを繰り返すことにもなります。

トレードするのならば発表からしばらく時間をおき、上下の変動がやや収まってきたタイミングがいいでしょう。そうすればスプレッドも通常に戻っていますし、トレンドも見やすくなっているはずです。

それでもまだ混乱が収まらないのであれば、無理にポジションを持とうとせずに様子見を続けるのが得策です。ボラティリティが高くなりすぎてもスキャルピングには不向きだということは知っておくべきでしょう。

スキャルピングに向いている通貨

ボラティリティが高い通貨といえば、新興国通貨やイギリスポンド(GBP)などが挙げられますが、必ず確認しておくべきはスプレッドの広さです。特に新興国通貨はマイナー通貨なためにスプレッドが広く設定されています。取引業者によって差はあるものの、やはり米ドル(USD)、ユーロ(EUR)、日本円(JPY)らの通貨ペアに比べるとスプレッドは広いので、トレード回数の多いスキャルピングには不利に働きます。

マイナー通貨は流動性も低いので、投機ファンドの大口の売買や政治不安などで突発的に大きく変動します。ですから、流動性が低い通貨はテクニカル分析が通用しにくいので、勝率もやはり下がってしまいがちです。

そのような点を考慮すると、スキャルピングに向いている通貨ペアは、世界の基軸通貨とされる米ドル(USD)と取引量で世界第二位のユーロ(EUR)の通貨ペアがおすすめです。情報もタイムリーに入ってきますし、取引量が多いので安定しており、テクニカル分析もしやすいというメリットがあります。

さらにここに日本円(JPY)を絡めるのが良いのではないでしょうか。なんといっても米ドル/日本円(USD/JPY)のスプレッドは最も狭く設定されています。多くの取引業者が0.3pipsです(それより狭い取引業者もあります)。これだとトレード回数が増えても、スプレッドによる負担を軽減することができるでしょう。

このようにFXでスキャルピングを行う場合は、「時間帯」、「通貨」についてのリテラシーを高めることで、より効果的に利益を出していくことができるようになります。