テクニカル分析の重要性

一般的には、長期的なトレンドを予測するには「ファンダメンタルズ分析」が重視され、短期的な値動きを予測するには「テクニカル分析」が重視される傾向があります。

スイングトレードには、ファンダメンタルズ分析が有効ですし、デイトレードやスキャルピングには、テクニカル分析が有効だということになりますが、やはり両方の分析方法を勉強し、精通していった方が勝つチャンスは膨らむでしょう。

FX(外国為替証拠金取引)で資産運用をしている個人投資家は、ファンダメンタルズ要素には敏感に反応するものの、テクニカルについての勉強をおざなりにするケースが多いようです。

テクニカルのインジケーターは無数にありますから、すべてを確認する必要はないでしょうが、メジャーなインジケーターの節目は市場でも意識されますので、知らないと損することになります。

インジケーターは、相場の「トレンドの強弱」を示す「トレンド系」のテクニカル指標と、相場の「買われ過ぎ」や「売られ過ぎ」を表す「オシレーター系」のテクニカル指標に分かれます。

どちらか一方のテクニカル指標では対応できない場合や、判断を誤ることがありますので、トレンド系とオシレーター系のインジケーターをバランス良く参考にしていくことがポイントになります。

今回はそんな数あるインジケーターの中で、日本人が考案し、FXのサイトでは節目として紹介されることの多い「一目均衡表」についてお伝えしていきます。

一目均衡表の活用方法

一目均衡表はメインチャートに表示されるテクニカル指標です。ローソク足チャートの他に5本も線が増えるので見た目が複雑にはなりますが、その分、時間論や波動論まで反映することができますので、とても奥の深いインジケーターといえます。見た目の複雑さから使用を諦める人もいますが、確認すべきポイントは3点だけです。まずはこの3点に注目してみてください。

登場する5本の線は、「転換線」、「基準線」、「先行スパンA」、「先行スパンB」、「遅行スパン」です(取引業者のツールによってはやや名称が異なります)。

初期設定

  • 転換線(9) 過去のローソク足9本分の(最高値+最安値)÷2
  • 基準線(26) 過去のローソク足26本分の(最高値+最安値)÷2
  • 先行スパンA (転換線+基準線)÷2をしてローソク足26本分先に表示
  • 先行スパンB 過去のローソク足52本分の(最高値+最安値)÷2をして、ローソク足26本分先に表示
  • 遅行スパン 現状のチャートをローソク足26本分だけ過去にスライド
  • 転換線と基準線の「クロス」に注目

転換線が基準線を下から上へ上抜けした時が、上昇のサインで「買いのシグナル」となります。逆に転換線が基準線を上から下へ下抜けした時が、下落のサインで「売りのシグナル」です。

上昇トレンドが発生した際には、転換線がそのサポートラインとなり、下落トレンドが発生した際には、転換線がそのレジスタンスラインとなります。

  • 先行スパンで形成される「雲」に注目

先行スパンAとBで囲まれている部分に色がつけられています。ここを雲と呼び、厚い雲ほど強いサポートラインやレジスタンスラインとなります。薄い雲はトレンドが反転しやすい部分です。特に先行スパンAとBがクロスするとトレンド反転かトレンド加速といった転換点となる可能性が高まります。

雲の中から外に抜けると、トレンドが強まる傾向があります。ローソク足が雲を上抜けした場合、今度は雲がサポートラインとなりますし、雲を下抜けした場合は、今度は雲がレジスタンスラインとなるのです。

  • 遅行スパンとローソク足の「クロス」に注目

遅行スパンと過去のローソク足がクロスすると、強いトレンドが生まることが多いので、上昇傾向であればそのまま買い、下落傾向であればそのまま売りという「順張り」が有効になります。

それぞれの線の初期設定の期間は、一目均衡表を考案した細田悟一氏が最も機能する期間と定めたものですので、市場心理を探るうえでも設定は変えない方がいいでしょう。さらに細田悟一氏によると、一目均衡表は「日足チャート」で最も機能するそうです。

2017年から2018年の米ドル/日本円(USD/JPY)の推移で確認

それでは実際に2017年から2018年にかけての米ドル/日本円(USD/JPY)の推移を日足チャートで、一目均衡表と照らし合わせて確認していきましょう。

2017年11月下旬より厚い雲の中を推移しています。上抜けできそうなタイミングは何度もありましたが、どうしても反発してしまいブレークできず、2018年1月に雲が薄くなった部分で雲を下抜けしてしまいます。同時に転換線が基準線を下抜けするデッドクロスとなり、ここから強い下落トレンドが生まれました。

それまでは1米ドル113円34銭あたりでもみ合いとなっていましたが、下落が続き、3月下旬には104円64銭をつけました。

しかし4月5日には、転換線が基準線を上抜けするゴールデンクロスとなり、4月の1ヶ月でかなり分厚い雲を上抜けしていきます。その後は雲がサポートラインとなって上昇トレンドを支え続け、10月には1米ドル114円55銭付近まで回復することになります。

その間に一度、8月下旬に雲を下抜けしたことがありましたが、これは「ダマシ」で、すぐに雲の中にローソク足が戻り、先行スパンA・Bがクロスした9月下旬から上昇トレンドが強まりました。

その後、雲を下抜けすることなく堅調に推移していましたが、12月に入ってから転換線が基準線を下抜けし、ローソク足が雲を下抜けして大きな下落トレンドが生まれています。

2018年12月24日現時点では、先行スパンの行方を見るとクロスするタイミングが何度か訪れますので、2019年1月にトレンドが反転するのか、それとも加速するのか見極めが重要になってくるでしょう。遅行スパンはローソク足にクロスした後、下落トレンドが続いていますので、ショートでの順張りを示しています。

12月に入ってからの下落トレンドは、FOMCが2019年の利上げペースを引き下げたことや、長期金利、ダウ平均、日経平均株価の下落といったファンダメンタルズ要素も大きく関わっていますので、テクニカル指標だけで判断することなく、今後のアメリカの経済状況にも注意が必要です。