ユーロの特徴と傾向

FX(外国為替証拠金取引)で資産運用をする場合、基軸通貨となる米ドルと共に、常に注目していかなければならないのが、「ユーロ」(EUR)です。取引量は世界第二位となります。

欧州連合(EU)圏内の多くで流通しており、28カ国で構成されるEUからイギリスやスウェーデンなどを除いた19カ国と、EU圏外の5カ国がユーロを共通通貨として導入しています。

欧州中央銀行(ECB)により政策金利は、2015年は0.05%でしたが、2016年以降は0.00%が続いている状態です。ただし、2013年より続けられてきた量的緩和については2018年12月で終了する方針となっています。資産購入プログラムの中止によって、金融引き締め政策へ移行していく計画ですが、政策金利については2019年の夏までは現状維持を打ち出しています。

量的緩和についてはタカ派的、政策金利についてはハト派というのが現在のECBの金融政策です。

目下の問題は、イギリスのEU離脱と、イタリアの財政赤字になるでしょう。

イギリスのメイ首相は、EU離脱案の議会裁決を2019年1月に延期しました。その間もEU側との交渉を続け、議会が納得できるだけの確約を取り付けたいという意向です。仮にイギリスが合意なしのEU離脱を選択した場合、ユーロが売られる大きな要因となるでしょう。

イタリアについては、2018年9月に3年間分の経済財政計画が閣議決定されましたが、黒字化目標から後退する財政赤字GDP比2.4%となるもので、EUの欧州委員会から予算案の修正を突きつけられています。それに対し、イタリア政府は2019年の予算案を修正しない構えです。

また、2018年にはアメリカのトランプ大統領が、EUに対し鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課すことを表明し、貿易摩擦、報復合戦に発展するリスクが生じました。こちらは、7月にはユンケル欧州委員会委員長が単独でトランプ大統領のもとを訪れ、追加関税を解消し、貿易紛争を回避しています。

ユーロで注目すべき経済指標

最も注目すべきは、「マリオ・ドラギECB総裁」の声明でしょう。金融緩和が終了し、金融引き締めに移行する段階はいつになるのか、ドラギECB総裁の声明の内容に、市場は敏感に反応しています。

ECB政策理事会は、総裁・副総裁・専務理事4人と各国の中央銀行総裁19人の合計25人で、6週に一度、木曜日に開催されます。ここで金融政策が決定されますから、この日はトレンドの発生や転換に要注意です。

また、ユーロの動向に影響を与える経済指標の代表といえば「Ifo景況感指数」です。こちらはユーロ圏の経済の中心であるドイツの経済指標になります。対象はおよそ7,000の企業の経営者です。ドイツ政府の経済研究所が調査を行い、毎月下旬に発表されます。

ちなみに2018年11月のIfo景況感指数は、102.0で、10月の102.8より減少しました。これで三ヶ月連続の減少となります。外需減少が要因にあげられています。

12月のマリオ・ドラギECB総裁の声明では、ドイツIfoは期待を裏切ったが、最近のユーロ圏の展開は、需要と賃金が物価を押し上げるという政策委員会の見通し通りだと述べられました。

Ifo景況感指数の1週間前に発表され、先行指標として注目されているのが、「ZEW景況感指数」になります。こちらもドイツの景況感を示す指標であり、欧州経済研究センター(ZEW)が調査し、発表します。

他にも、ドイツの「小売売上高」や「GDP」、欧州の消費物価指数である「HICP」や生産者物価指数である「PPI」も為替変動に影響をもたらしますので、確認は必要になってくるでしょう。

2017年から2018年にかけてのユーロ/日本円(EUR/JPY)

ユーロについては、政策金利が0.00%であることからロングポジションを保有しても、スワップ金利がマイナスとなります。ユーロ/日本円(EUR/JPY)については、スワップ金利が最もマイナスが小さい取引業者で、-1円です。業者によっては-27円というケースもありますので、ユーロ中心に取り扱う場合は、どこの取引業者が有利なのかしっかりと調べておく必要があるでしょう。

スプレッドについては、米ドル/日本円(USD/JPY)よりもやや広めになります。最も狭く設定している取引業者で0.39pipsです。広い業者だと2.0pipsや3.0pips、さらに5.0pipsというケースもあります。0.4pipsを目安にしていくのがいいのではないでしょうか。

(スワップ金利、スプレッドともに2018年12月20日時点)

それでは2017年から2018年にかけてのユーロ/日本円(EUR/JPY)の推移を確認していきましょう。

ユーロ/日本円(EUR/JPY)は米ドル/日本円(USD/JPY)と比較するとボラティリティ(変動率)が高くなります。ですからデイトレードやスキャルピングを中心にトレードしている投資家に人気があるのです。

2017年4月には1ユーロ114円85銭。ここから上昇トレンドが2018年2月まで続くことになります。高値は1ユーロ137円50銭です。ここからは乱高下が繰り返されることになり、5月下旬には1ユーロ124円61銭まで急落、7月には1ユーロ131円98銭まで回復しました。8月には再び1ユーロ124円90銭まで下落し、その後は上昇、9月には1ユーロ133円12銭まで回復。10月にはまた1ユーロ126円63銭まで下落。それ以降はもみ合いの状態が続いています。

2018年としては1ユーロ124円から137円のレンジ内での上下です。ここを目安に逆張りをしていくと、かなり大きな利益を得ることができます。1万通貨で10Lotほどポジションを保有しておくと、上下するごとに70万円から90万円の利益が出ます。

ただし2016年まで振り返ると、イギリスのEU離脱の国民投票があり、1ユーロ109円53銭まで暴落したこともありました。政治情勢には警戒が必要になってくるでしょう。

利上げを繰り返してきたアメリカと比較するとユーロが通貨安になっていることはいなめません。ユーロ/米ドル(EUR/USD)を見てみると、2018年2月の1ユーロ1.255ドルから、11月の1ユーロ1.121ドルまで下落トレンドが続いている状態です。

ECBで金融緩和が続いているだけではなく、ドイツ銀行の格下げや、イタリアの経済不安、イギリスのEU離脱問題などの複数の要因が挙げられます。

ただしアメリカも景気後退ムードが高まってきており、2018年12月のFOMCで2019年の利上げペースが3回から2回に引き下げられています。S&P 500もここ数週間下落傾向にあり、今後のアメリカ経済の状況もユーロの為替変動に大きな影響を与えていくでしょう。